「君は隅田川に消えたのか」 駒村吉重 著2015年10月15日

それまで持っていた作品のイメージを180度変えた館林美術館での「藤牧義夫」展。

ミュージアムショップに「君は隅田川に消えたのか」は置かれていました。貧困の中に消えていったと言われる版画家のどこにミステリーがあるのか、その本の帯に書かれた「ミステリーは・・・」にほんの少し興味が湧き、買って帰ることにしました。

若き画廊主「大谷芳久」が版画家「小野忠重」から藤牧義夫遺作展のための版画を受け取ります。遺作展での作品はその大半を東京国立近代美術館が買い取ります。

藤牧義夫は当時「画友」小野忠重を訪ねた後、消息を絶ちます。24歳と8ヶ月。

「画友」小野忠重による評伝「藤牧義夫」によれば貧困であり病弱であった彼が絵に命をささげ、隅田川に自ら身を投じたと言うことの様です。

画廊主大谷芳久は藤牧義夫の代表作「赤陽」に疑問をいだきます。版画だからこそたどり着けたとも言えます。「藤牧義夫 真偽」大谷芳久著として小野忠重から渡された作品にある改変の跡を見つけ出し纏めています。

藤牧義夫によるオリジナル赤陽と消息不明となった後誰かによって後摺されたものがあるのではないかと・・・。後摺のその作品には芸術性が損なわれている事を大谷芳久は見つけ出していきます。

だれが何のために・・・・。藤牧義夫の失踪とどう関わっているのか・・・。
実在の人物、実在の作品、実在の研究資料等、近隣館林市出身の芸術家藤牧義夫を観ると言う点からもなかなか面白いと思います。