赤陽2015年05月27日

藤牧義夫の代表作です。

私は25年ほど前、この作品を画廊の広告写真で初めて見ました。刺々しい線と小さく沈んだ赤は、その後この作品に対する批評をそのまま受け入れるにはぴったりの印象を与えてくれました・・・2011年、館林美術館における「藤牧義夫-生誕100年」と題した展覧会で実物を前にするまでは・・・。

http://bunka.nii.ac.jp/db/heritages/detail/109939
こちらでこの作品の画像と一般的な評論が見られます。

「藤牧義夫-生誕100年」でみた「赤陽」は20年間すり込まれた印象とは全く違っていました・・・文化遺産データーベスにもある生活の困窮と不安、死の予兆という印象。

沈みゆく太陽が作る街の陰は時折、必要とするものそのものだけを映し出します。まさしく、そんな印象をこの実物の「赤陽」は見せていました。最小になった太陽は街の心の固まりです。どこに死の予兆や生活の貧困を感じるのでしょうか。

藤牧義夫の光りのとらえ方のうまさが実物を見ることによってよく分かる展覧会でした。白黒のものも含めて光りの表現が特にうまいと思います。

「すり込まれた情報」、あまりにもぴったりと、すり込まれてしまった自分がちょっと恥ずかしくもありました。そういえば、事実餓死した版画家-谷中安規の作品を見ても生活の困窮など見えてこないですものね。
なんだか、ストーリーにはすこぶる弱い自分を発見できました。